車の乗り方                          コラムTOPヘ




車は乗り方によって車の寿命にまで大きく影響してくる乗り物です。日頃のメンテナンス、ちょっとした心遣いで車の調子は後々全く変わってきます。

よくあるケースとして乗りっ放しでオイル交換を全くやったことがなく、車検の時にやっておいてくれるだろうという程度の認識の人がいますが、こういう人が年間2万キロも走った場合、10年もするとエンジンはガラガラと音をたて、マフラーからは大量の白煙を吐き、エンジンオイルは1000キロも走れば空になってしまうということになります。きちんとメンテナンスされているエンジンは10万キロ走った車でも、例えば1万キロオイル無交換でもオイルはきちんと残っています。エンジンは100%金属でできていますから、オイルは金属同士を滑らかに動かすために最も重要なものです。エンジンオイルは入っていれば焼きつくことはありませんが、役目を終えたエンジンオイルは金属同士が擦れあい金属の磨耗のスピードが早くなります。エンジンは焼きつかなければいいというものではありません、オイル交換はエンジンのコンディションを維持するために最低限必要なメンテナンスなのです。

オイルがオイルとしての役目をキチンと果たすのは乗り方にもよりますが、一般のオイルで5000キロ、良質のオイルで6000キロ〜7000キロ程度です。以後は金属同士の当たりが強くなり磨耗が早まっていきます。最近の車にはオイルの容量を増やしオイル交換サイクルを長く設定している車もありますが、せいぜい通常の2倍が限界でしょう。日々オイル交換をしてきた経験から申し上げるならば、高性能オイルを使用しても1万キロも走ると、オイル分子の砕けたシャバシャバの状態になっています。近年では省燃費性を重視するメーカーの思惑から0W20、5W20といった低粘度オイルを指定する車が主流です。低粘度のオイルはベースオイルの性能が高性能であることが必要条件ですが、これまでの10W40、5W40といったオイルに比べて油膜が薄いことから金属同士の当たりが強いのは避けられません。そのためオイルの分子破壊による性能低下が早く、また低粘度ゆえのオイル上がりが避けられないことからオイル消費量も早い傾向が見られます。例えば1万キロ無交換の場合、以前の粘度でしたらオイル消費は10%から20%程度で済んでいたところが、低粘度オイルの場合は30%から40%消費しているのが標準です。2万キロ無交換で走行した車はほぼ空に近い状態になってしまっています。オイル粘度の違いでこれほどの違いがあるのです。オイル管理は低粘度化が進んでいる近年はますます重要性が高まっています。低粘度指定のくるまは5000キロを交換時期のマックスと考えてください。5000キロ以上無交換で走るのはもはや危険レベルです。5000キロ以内の交換であれば、低粘度オイルであっても10万キロ走ってもエンジンは全く損傷を受けず最上のコンディションを保てることは当店のお客様が実践し確認しています。少し固めの5W30のオイルに換えるだけでも、燃費は多少犠牲になりますが、エンジンにとってはだいぶ楽な環境になるということも覚えておくと良いでしょう。5W20指定のエンジンに例えば10W40の粘度のオイルを使うのは粘度が高すぎることによる故障起因のリスクがあり使用できませんが、5W30ならば使用可能です。それでも、燃費で5%程度低下するという報告がオイルメーカーから上がってきています。

ATFも同様に交換する必要があります。無交換ですと、オートマのミッションは20万キロ程度で壊れる車が多いです。オートマの内部には多板クラッチがいくつもあるのですが、金属を配合した材質で出来ています。これらが磨耗してきちんと作用しなくなったときがオートマミッションの寿命です。昔ながらのマニュアル車のクラッチと同じようなものです。オートマのミッションは全て自動でいくつものディスクの切替を行っているのですが、作動は全て油に頼っています。油の性能が低下すると作動のタイミングが合わなくなったり、ディスクが滑りやすくなったりして、ディスクのすり減るスピードが速まります。車によってクラッチの減りやすい車、減りにくい車はあるようですが、5万キロ程度走行した車のATFを抜いてみると、薄黒く汚れ、鉄粉が混ざる状態になっている車が多いです。この鉄粉の正体はディスクから削れ落ちた金属です。その分ディスクは減っているということです。ATF交換はできれば3万キロ、少なくとも5万キロ以内に一度は行っていただきたいところです。ここで一度交換することでミッションの寿命を伸ばすことができます。全くATF交換をしない車が20万キロ走るのですから、きちんと交換をすることでミッションの寿命は更に伸ばしていくことができるでしょう。最近のATFはCVTミッションにも使用されることから潤滑性を意識したつくりになっているように思います。オートマミッションにとっては交換サイクルを伸ばすことができますが、潤滑性が高すぎる場合は交換直後ミッションとの相性によってはディスクが滑るリスクがあります。交換直後に変速がおかしい症状が現れた場合には当店へお越しください。ATFが原因の場合でしたら潤滑性と摩擦力のバランスの良いATFを使用することで解消できる可能性が高いです。

さて、ユーザーによっては自分が乗っている間だけ何とか壊れずに動けばいいだろうと考えている人がいるように思います。自分が最後のユーザーとわかっている車ならそれでもよいかもしれませんが、特に新車、比較的新しい車を買った人は次のユーザーが何人か必ずいます。後々のユーザーのことまで考えて、一台の車を長く乗り継いでいくことを考えていただきたいと思います。そして車の寿命はいまでは30年30万キロを目標に考えていただく必要があると思います。突然ビックリするようなことを申し上げましたが、その理由を説明したいと思います。

近年は日本車の輸出が非常に活発に行われています。世界中の国々へ向けて日本の車が輸出されています。日本で廃車になった車でも、パーツとして分解されコンテナに積み込まれ世界へ供給されています。日本車はとても人気があるのです。日本ではもう廃車と扱われる車が現地では100万円近くになる場合もあるということです。大体発売より10数年経過するヴィッツ、カローラクラスなどはとても人気が高く現地では70万〜80万になります。生活水準は日本よりずっと低く所得では5分の1程度かそれ以下の国も多くあります。一生懸命働いてやっと貯めたお金で買った車が、壊れる寸前の車だったらどうでしょうか。逆の立場だったら・・・。あなたは10数年以上経過したメルセデスベンツやBMWを400万円(80万×所得差5倍)出して買えるでしょうか?そして壊れた場合100万単位のお金をかけて修理しながら維持することができるでしょうか?こちらで廃車になる車が現地で80万円するのですから、エンジンやミッションの載せかえも日本で修理する感覚の5倍で見積もる必要があるでしょう。現地の人は日本車に乗ることを夢見て400万円ものお金を出して10数年前のカローラを購入するのです。このような理由から発展途上国では更に乗り継がれ使い古された30年近く前の日本車がまだ現役で走っています。これが世界の現実です。30年30万キロ持つように車を大切に乗り継いでいく気持ちで所有することがグローバルな視点に立っているということだと思います。

日本という国は経済が何よりも優先するように教育されてきたことから、古くなったら次々と新しい車に乗換えましょうという空気が全体を支配しているように思います。しかし、このような使い方は世界でも極めて稀で、例えば日本が経済的にも最も影響を受けているアメリカでも古くなった車でも直しながら20万キロ〜30万キロ乗るのが当たり前です。結構年式の古い距離を走った車でもまだまだ使える価値のある物として比較的高い価格(例えば20万キロのカムリが4000ドル)で販売されています。現実には車という乗り物は20万キロ程度では終わらない乗り物だという世界の常識に是非目を向けて頂きたいと思います。もちろん新しい物好きの日本人にとっては、飽きてしまったら乗り換えるというのが当たり前となっていますので、そのことについてとやかく言うつもりはありません。どんどん乗り換えて貰った方が、日本の土地で商売をしている私としても助かります。日本の環境で生活している以上、より新しい物に目移りしてしまうのは仕方のないことで、またすぐに買い換えるからと現在乗っている車のメンテナンスを怠ってしまいがちですが、そこはまた別の問題として扱ってもらいたいのです。例え現在乗っている車に愛情がなくなってしまったとしてもメンテナンスを行うことは愛情とは別の問題と考えてもらいたいのです。

なぜなら、いつか廃車にしたら鉄屑になるとあなたが思いこんでいた車は、国によってはそのままの形で、輸出規制のある国の場合でもパーツに分解されて東南アジアやアフリカ、南米などへと輸出されていくのです。メーカーや車種によって人気不人気はありますが、多くの車は輸出され乗り継がれていくのです。人気車でなくともほとんどの車は修理用パーツとしての需要があります。

オイル交換やオートマのオイル交換をさぼってやらないでいると、最後に世界のどこかで買ったばかりの車が調子が悪いといって嘆く人が出てくるのです。オイル交換は日本では5000円程度ですが、これを何度かさぼって数万円浮かせることがどういう結果になるかと言えば、途上国で100万単位のお金をかけてエンジンを載せ替えるはめになる人が出てくるということです。

車のメンテナンスは、やはり大切ということをご理解いただければ幸いです。

















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